コロナ禍で一気に広がったリモートワーク。日本、世界の働き方があの時期をきっかけとして大きく変わりしました。時が流れ、現在はどういう状況になっているのか?そして地方、中小企業の皆さんにとって、この働き方はどんな意味を持ってきたのか?これからどういう意味を持つようになるのか?
今回は、私自身もリモートワーカーとして働いており、かつリモートワークに関するプロジェクトなども経験してきた立場から、地方経済にとってのリモートワークの価値に関してお届けしたいと思います。
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コロナ禍と比較したリモートワークの現在地
2020年、コロナ禍における緊急事態宣言をきっかけに、日本におけるリモートワークは急速に広がりました。当時は感染拡大防止のため、ほぼ全社員が在宅勤務に切り替わった企業も珍しくありませんでした。
それでは、2026年の現在はどうでしょうか。総務省が2026年3月に公表した資料によると、企業のテレワーク導入率は令和6年速報値で47.3%まで普及が進んだ一方、地域や企業規模、業種によって実施状況には明確な格差が生じいるということ。
参照:総務省「総務省のテレワークに係る取組」(2026年3月)(PDF)
また、とりわけメディアなどで話題になっているのが、大企業を中心とした出社回帰の動きです。
その理由として一番多いのが、「コミュニケーションをより密にして、業績向上を目指すという方針に、会社が方向展開をした」ということです。
一方でリモートワーク実施者の82.2%が「今後も続けたい」と回答している状況もあり、会社が求める働き方と、働く人が望む働き方の間に、ギャップが生じている状況でもあるようです。
参照:2025年8月 「第十回・テレワークに関する調査」を発表 テレワーク定着も「頻度減少」と「マネジメントの壁」
コロナ禍が落ち着いたことにより、リモートワークはこのままなくなってしまうのか?
そのようなニュース記事なども時々目にしますが、政府や各調査機関の発表されている資料を確認すると、「リモートワークが無くなる」ということではなく、企業ごと・地域ごとに最適な働き方を探る「二極化」の動きが加速しているというのが今の状況かと考えております。
そして、働く方々は大多数がリモートワークで働きたいと思っている状況である。ここを念頭におくと、地方や中小企業にとって、リモートワークという働き方を味方につけることは、むしろこれからの地域や中小企業にとって、とても有効な人材獲得戦略につながるのではないか?と感じております。

地方や国がリモートワークを推進してきた背景
実はコロナ禍の最中、国は「デジタル田園都市国家構想交付金(現在は、地域未来交付金へと移行)」という交付金事業を通じて、地方創生を推し進めるための施策として「テレワークによる働き方」を後押ししてきました。
サテライトオフィスの整備や、利用促進に取り組む自治体を支援するこの制度によって、全国各地に「コワーキングスペース」や「サテライトオフィス」が次々と生まれました。
同時に大きな役割を果たしたのが移住支援施策です。東京23区に一定期間在住・通勤していた人が地方に移住し、就業や起業をする場合、世帯なら最大100万円、単身なら最大60万円が支給される制度で、2021年度からは「テレワークで東京の仕事を続けながら地方に移住する人」も対象に加わりました。
参照:内閣官房・内閣府総合サイト「地方創生」地方創生移住支援事業の概要より
実は私も、この国の移住支援の流れの中で、故郷福島県にUターンした一人です。
テレワークを前提とした移住支援金の後押しがなければ、地方に戻って今のような働き方を選ぶ決断は私にとってハードルの高いものだったと感じています。
リモートワークは地域の“仕事の創出”にも寄与してきた
地域未来交付金の交付金メニューには、現在、職に就いていない女性や高齢者の新規就業を促す官民連携の取り組みを支援する枠組みも用意されています。
地域のコワーキングスペースが「働く場」として整備されたことで、これまで就業機会が限られていた人々を中心に、新しい仕事が生まれていったことは事実だと感じています。地方創生という観点で見ると、リモートワークという働き方が広まってきたことが、地域に雇用を創出してきたことにつながっていると私は感じています。
時間や場所の制約から解放されることが、収入と働きやすさの両面にプラスに働いていることを感じていました。
リモートワークは、単なる「オフィスに行かない働き方」ではなく、これまでフルタイムでの労働市場に参加しづらかった層に、新しい働く選択肢を提供してきた仕組みでもあるのです。

中小企業のリモートワーク化における課題
ここまで見てきたように、「地方創生」や「新たな働き方を提供する」という観点ではリモートワークは大きな効果を上げてきたと実感しています。しかし、肝心の受け皿となる中小企業側では、導入がなかなか進みませんでした。
とても多忙な小企業の経営者の皆さんは、余裕を持って、目の前の仕事を「テレワークでできる業務」と「そうでない業務」に分類・整理できている方は多くありません。また、そのプロセス自体が苦手な経営者も少なくないと感じていました。
その結果、生まれているのが、需要と供給の深刻なねじれ現象であると思っています。地方は慢性的な人材不足に悩まされているにもかかわらず、リモートワークという採用の間口を広げる手段を活用しきれず、採用に苦戦する企業が数多く存在しています。
リモートワークであれば、地方の会社でも働きたい人はたくさんいるのに、それを受け入れる体制を整えられている企業は限られている。この対照的な状況こそが、中小企業、とりわけ地方の中小企業の周辺で起きているリアルな状況だと思っています。
政府はリモートワーク+地方のデジタル化を推進する、地域はどうする?
こうした状況を国も課題として認識しており、テレワークの導入率が低い地方部を中心に、一層の普及定着に取り組むよう呼びかけています。
デジタル庁も2026年7月に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、地方公共団体のシステム標準化やガバメントクラウドへの移行など、地方の行政DXを引き続き推進する姿勢を示しています。
大企業が出社回帰に舵を切るのは、それぞれの事業特性や組織文化を踏まえた合理的な判断なのだろうと思います。
しかし、地方や中小企業にとって、リモートワークはまだ「使い切れていない大きな武器」になると考えています。人材不足に悩む地方の企業ほど、場所の制約を超えてデジタル人材を呼び込む手段としてリモートワークをというものを諦めてはいけない。それは、国や地域の自治体が実はずっと応援してきた地域経済にとっての起爆剤となりうる施策なのです。
「コロナ禍が落ち着いたから…」「うちにはなかなか難しい…」そういった観点とはまた少し変えて、日本の経済、これからの地域経済の未来、現在の社会で働いている人々のニーズなどを広く考えていただきたい。そして、地域のため、日本のためリモートワークの価値を再度見直す方が一人でも増え、地域経済にとって良いきっかけや出会いが生まれていくと良いなと思っていますし、私自身もそのために日々またイベントやセミナーなどの活動を続けていきたいと思います。